1. 『失敗の本質』に見る“勝って負ける”構造
『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』という書籍をご存じでしょうか。旧日本軍が太平洋戦争でなぜ敗れたのかを、精神論ではなく組織論・戦略論の観点から冷静に分析した名著です。
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特に象徴的なのが「インパール作戦」です。補給路が整っていないにもかかわらず、精神論と現場の熱意だけで部隊を進めた結果、多くの兵士が飢えと病に倒れた――という、あまりに痛ましい作戦です。短期的な戦術的勝利にとらわれ、長期的な兵站(へいたん:補給や基盤)を軽視したことが、悲劇を生んだのです。
この構図、実は私たち個人の人生にも通じる部分が多いと思いませんか?
2. 個人の人生にも潜む“戦略の欠如”
一時的に高収入を得ることは「戦術的な成功」と言えます。しかし、その収入をどこに使うかが、長期的な人生の“勝敗”を分けます。
たとえば、収入を浪費して生活水準を上げ、見栄のために高級車やブランド品を購入する――これは、華やかな勝利のように見えて、将来に備える『兵站』が欠けた状態です。
資産が増えない人に共通するのは、「目先の勝ち」に集中しすぎていて、再現性ある“基盤づくり”をおろそかにしている点です。いざ何かあった時、頼れるものがなくなって“人生版の万歳突撃”を強いられてしまうのです。
まさに、「戦って勝ったのに、戦略的には負けていた」日本軍と同じ構造です。
3. 戦略的に生きるとは?
戦略的に生きるとは、目先の成果に一喜一憂せず、長期的に安定して成果を出せる“構造”を意識して動くことです。
そのために意識したい視点を3つ紹介します。
① 資産と負債の見極め
資産とは、自分の代わりにお金を生み出してくれる存在。負債とは、持っているだけでお金が出ていく存在。
高級車や宝石は一見資産に見えても、維持費や税金がかかり続ける限り、それは負債です。逆に、株や不動産、ブログ、知識などは、長期的にお金や価値を生み出す資産になります。
② 時間の使い方
何となくSNSや動画で過ぎる1時間も、読書や副業、学習に振り向ければ、未来の収入やスキルとして返ってきます。
1日30分でも、5年で約900時間。これが「戦略的な兵站の差」を生みます。
③ 情報を“構造的に”捉える視点
今だけの流行やバズではなく、「なぜその流れが起きているのか」「自分の人生にどう関係するのか」と俯瞰して考える習慣が、戦略的な意思決定につながります。
4. プログラミング教育は“戦略思考”の訓練
ここで子どもの教育にも目を向けてみましょう。
プログラミング教育というと「コードが書けるようになる」ことが注目されがちですが、本質はもっと深いところにあります。
それは、戦略的に物事を考える力を養う訓練だということです。
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問題を分解する力(=構造化)
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トライ&エラーを前提に考える力(=検証思考)
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自分の作りたいもののために必要なことを逆算する力(=設計力)
これらはすべて、未来の「自分の人生を設計して生き抜く力」につながっています。
プログラミングを学ぶということは、目先のテストで点を取る『戦術』だけでなく、長期的な自立の『戦略』を身につけることなのです。
5. 金融教育×プログラミング=未来の兵站をつくる
日本では金融教育が遅れていると言われます。資産と負債の違い、複利の力、リスクとリターンの考え方――
本来ならば子ども時代から少しずつ学ぶべき知識ですが、大人になっても知らないままの人も多いのが現実です。
だからこそ、「金融教育」と「プログラミング教育」を掛け合わせることが、これからの子どもたちの兵站作りにつながると私は考えています。
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お金の仕組みを理解し、使い方に戦略を持つ
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目の前の課題にロジカルに向き合い、改善を繰り返す
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自分で選び、つくり、未来を描けるようになる
それは、情報と変化が激しいこれからの時代を“持久戦で生き抜く”ための最大の武器になるでしょう。
6. まとめ:戦略なき人生は、資産も教育も残らない
私たちの日々の選択――
収入を何に使うか、どこに時間を割くか、子どもに何を学ばせるか。
それらはすべて“戦術”であり、バラバラに見えるものです。
けれど、それらをどの方向に向けて積み重ねていくか、という“戦略”がなければ、どんな努力も徒労に終わってしまうかもしれません。
『失敗の本質』が伝えてくれるのは、「戦って勝っても、戦略がなければ負ける」という厳しい教訓です。
この教訓を、わたしたちの人生と、子どもたちの未来に活かせるように。
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