Pythonって本当に子供に教えられるの?大人が読んで感じた“リアルな壁”

スクラッチ作品・活用術

「小学生でもわかるPython入門」という本を本屋で見かけたとき、正直こう思いました。

「大人の私なら、余裕で読めるでしょ。」

ところがページをめくってみると、そこには見慣れない記号の羅列、英語ベースの命令、意味不明なカッコやコロン…。自分でも「なにこれ?」と思ってしまい、衝撃を受けました。

一体これを、子供たちは本当に理解できるのでしょうか?今回は、「大人が読んでみてわかった、Pythonの“本当の難しさ”」と「子どもがプログラミング言語を学ぶ上での現実」を、親目線で深掘りしていきます。

子供にプログラミング言語を教えるという現実

Pythonは今や世界中で人気のあるプログラミング言語で、GoogleやInstagram、YouTubeなどのサービスにも使われています。文部科学省が公開している『小学校プログラミング教育の手引き(第3版)』でも、将来的にはPythonやJavaScriptなどのテキスト型言語への接続が重要とされています(出典:文部科学省「小学校プログラミング教育の手引き(第3版)」)。

ただし、学校教育で扱うのは主に「プログラミング的思考」であり、いきなりPythonのような本格的な言語を教えることは想定されていません。

とはいえ、最近では市販の教材やプログラミング教室で「小学生向けPythonコース」が登場しており、そこにギャップを感じる親御さんも少なくありません。

そもそも、プログラミング言語ってなに?

プログラミング言語は、機械に命令を伝えるための“言葉”です。英語や日本語のように、人と人とのコミュニケーションではなく、人とコンピュータの橋渡しをするためのツールです。

でも子供たちにとっては、「なぜこの“言葉”を覚えないといけないの?」という本質的な疑問が生まれます。英語なら「外国の人と話せるようになる」などの実利的なイメージがしやすいですが、Pythonはその言語を覚えた先に何があるのかが見えにくいのです。

「小学生でもわかる」って本当?

多くの「小学生向けPython入門」本は、以下のような前提を持っています。

  • すでにScratchなどのビジュアルプログラミングに慣れている

  • 英語やタイピングに抵抗がない

  • プログラミングで何か作りたいという目的がある

つまり、完全に初心者の子どもが読むにはハードルが高いのです。

たとえば、Pythonでは以下のような記述をします。

pythonif score > 80:
print(“Great job!”)
else:
print(“Try again!”)
 
このコードを見てすぐに「なるほど、点数が80より上なら“Great job!”って表示するのね」と理解できる子は、相当優秀です。ましてや、英語、比較演算子(>)、インデント(字下げ)、条件分岐など、複数の概念を同時に理解する必要があります。

大人が感じた“リアルな壁”

実際、私自身が子ども向けPython本を読んだときに感じたのは、「記号の意味がわからない」「結果がどうなるかイメージできない」「前提知識が多すぎる」といった不安でした。

特に「:(コロン)」や「()(カッコ)」の使い方ひとつ取っても、間違えるとエラーが出る。でもそのエラーがまた英語で出てくるので、何が原因かわからず挫折します。

「自分が理解できないものを、子どもに教えるのは無理なのでは?」という気持ちにもなりました。

子どもは“言語”ではなく“体験”で学ぶ

ここで重要なのは、「子どもは言語を理解しようとしているのではない」ということです。

彼らは「何かを作りたい」「遊びたい」「動かしたい」という目的があり、プログラミング言語はそのための道具でしかありません。

たとえば、マインクラフトでレッドストーン回路を作ったり、Scratchでゲームを作ったりする中で、「こうするとこうなる」という“体験”を通して自然にルールを覚えていきます。

逆に、目的がないまま言語だけを学ぼうとすると、大人でもつまづくのです。

実は、小学生でPythonを学ぶ子どももいる

とはいえ、全ての子どもが無理というわけではありません。子供のタイピング力や論理的思考力には個人差があり、ある程度の前提があれば小学生でもPythonに挑戦することは可能です。

たとえば、以下のような民間のプログラミング教室では、小学生でもPythonを使ったAI開発やゲーム制作を学べるカリキュラムが用意されています。

どちらも子供の年齢やレベルに合わせた個別指導型の学習環境が整っており、「ただの座学」ではなく、自分の手で動かして学ぶ=体験型の学習が特徴です。

また、プログラミング教育推進団体「みんなのコード」が2023年に発表した『小学校におけるプログラミング教育の実態調査』では、全国の小学校のうち91.3%がすでに何らかのプログラミング教育を導入していることが報告されています(出典:みんなのコード「2023年度 実態調査レポート」)。

「ちなみに、体験学習については以前の記事で触れました」【体験談】遊び感覚でプログラミング学習にハマった息子の話~in田中学習会

ステップとしてScratchが最強の入り口

子どもにとって、いきなりPythonではなく、まずはScratchなどのビジュアル言語から始めることが最も効果的です。

Scratchでは、ブロックをドラッグ&ドロップしてゲームやアニメーションを作ることができ、テキストを入力する必要がありません。それでも「変数」「条件分岐」「繰り返し」など、プログラミングの基本概念はしっかり学べます。

この段階で十分に遊び、学び、「もっと自由にしたい」「本格的なことがしたい」という意欲が生まれたときに、Pythonなどのテキスト言語に進むのが理想的なステップです。

「Scratchについてはこちらの記事で取り上げました」⇒初心者でも楽しく学べる『スクラッチ』の魅力と活用方法を徹底解説

『マンガでわかる』教材のチカラ

大人の私が「これは分かりやすい!」と思ったのは、「マンガでわかる」シリーズのように、ストーリー仕立てでキャラクターが疑問を代弁してくれる教材です。

たとえば『マンガでわかるPython入門』では、主人公が先生に質問しながらストーリーが進んでいきます。会話の中で自然にコードの意味が解説されるので、「記号の意味がさっぱり…」という壁がぐっと低くなります。

視覚的に処理の流れやエラーの原因が描かれることで、感覚的にも理解が進みやすいのです。こうした教材は、子どもだけでなく「プログラミングはちょっと苦手…」という親世代にもぴったりです。

まとめ:大人がつまずくからこそ、子供の学びに寄り添える

「Pythonは子どもに教えられるのか?」

答えは、「段階を踏めば、教えられる」です。

いきなりテキストベースの言語に飛び込むのではなく、Scratchやロボット教材、マイクラなどの“遊び”を通して、少しずつ「プログラミングの考え方」を育てていくことが大切です。

そして、大人である私たちが「思ったより難しい」と感じたからこそ、その難しさを回避する工夫や道筋を考えてあげられるのだと思います。

プログラミングは、未来を生きる子どもたちにとって大切なリテラシー。だからこそ、無理なく、楽しく、少しずつ歩ませてあげたいですね。

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